バウンシングボールの作成手順についてまとめました。
※作例ではMayaを使っていますが、どのCGソフトでも応用できる内容となっています。
めざすアニメーション
- フレームレート:30FPS
- フレーム範囲:0~150F
- 体育館で弾むバレーボールのイメージ
- 高い位置から落ちて転がり、弾み終えて動きを停止するところまで作成する
- 変形アニメーション(ストレッチ&スクワッシュ)は入れない
作る動きをイメージする
作業に入る前にどんなイメージ・前提のアニメーションを作るかイメージすると制作中に迷うことが少なくなります。
たとえばバウンシングボールなら、どれぐらいの大きさ?重さ?どれぐらいのはずみ具合?どれぐらいの高さから落ちる?などなど。
とくにアニメーションに影響してくる要素として、重さ・材質による弾み方の変化があります。
- ピンポン玉は軽くてよく弾む、ボウリング球は重くてあまり弾まない
- 地面よりフローリングの方が弾む
今回はパッと見て弾んだボールと分かりやすい設定にしたいので、バレーボールが平らな床を弾むイメージで制作します。
下記動画01:02あたりのバレーボールをタイミング参考にしてみます。
<:コマ戻し
>:コマ送り
Space:再生:一時停止
バウンシングボール作成手順
シーンの準備
- 原点に球を作成する
- 球のサイズを半径:1に設定する
- 開始の高さまで移動する
球のサイズとリファレンスを参考に、だいたい1mぐらいの高さまで上に移動します
これでアニメーションを作る準備ができました。キーを設定する
球を選択して、以下の順にキーフレームを打ちます。
- 00F:開始の位置でキーを打つ
- 15Fに移動する
- 15F:球を前方の落下地点に移動してキーを打つ
- 26Fに移動する
- 26F:球を弾んだ空中地点に移動してキーを打つ
- 37Fに移動する
- 37F:球を前方の落下地点に移動してキーを打つ
これで2バウンド目までの土台ができました。
同じ要領で続きのバウンドを空中地点・落下地点でキーを打っていきます。
98Fまでバウンドの作成を終えたバウンシングボール。
上下に弾むカーブを調整
キーフレームのままだと動きがふわふわしているので、弾む感じを出すためにアニメーションカーブを調整していきます。
アニメーションカーブを確認する
- 球を選択してグラフエディタを開く
- 上下移動を担当する移動軸を選択する
上下移動のカーブはボールが上下に弾む動きを表しています。
カーブが波形になっているのがふわふわしている原因です。これをカーブ編集しながら弾む形に調整していきます。
キーのつながり方を変える
- 落下地点のキーの接線を分割する
- お椀型のカーブを意識して落下地点のキーの接線を調整する
地面に当たった瞬間に跳ね返るようなカーブ形状にすることでボールのバウンドを表現できます。
前に進むカーブを調整
アニメーションカーブを確認する
- 前後移動を担当する移動軸を選択する
キーごとにカーブがいびつになっているのがガタついて見える原因です。これをスムーズに前進する形にカーブ調整していきます。
キーを削除してガタつきをなくす
- 0Fと98F以外のキーをすべて削除する
- 0Fと98Fの接線を、最初は等速・だんだん遅くなって最後に止まるようなカーブに調整する
細かいバウンドを追加していく
98F以降の微細なバウンドを作成していきます。
基本的な流れはここまでと同じです。
- 弾む軸はキーの間隔をだんだん狭く、高さをだんだん低くなるように127Fまで
- 進む軸は98F以降も微妙に進みながら132Fで止まるように
全体的な調整
一通りできたところで、全体的に違和感を感じるところを調整していきます。
気をつける点は以下の3ポイントです。
- 上下のバウンド:高すぎないか・急に低くなっていないか
- バウンドのタイミング:長すぎないか・短すぎないか
- 前進の移動距離:長すぎないか・速すぎないか・急停止していないか
揺り返しを追加
最後はピタッと静止しても良いのですが、バレーボールの質感や重さの表現として少しだけ反対方向に戻る動きを追加します。
- 進む軸の148Fに少しだけ戻る動きを追加
回転アニメーションを追加
ボールが転がる回転アニメーションは、アニメーションカーブを流用することで作成できます。
回転値は移動値の57倍
球の回転量は移動量から計算できます。
半径1cmの球が1cm進むのに57度回転する
移動と回転が連動することになるので、カーブをそのまま流用できると楽です。
- 前後移動のアニメーションカーブをコピーする
- 転がる方向に回転する軸にカーブをペーストする
- ペーストしたカーブを57倍スケールする
Mayaのキースケール
- グラフエディタ 編集>スケール□
- 値のスケール:57に変更してキーのスケールを実行
3dsMaxのキースケール
- カーブエディタ ツールバー:値をスケール
- 「スケールにスナップ」ツールでスケールの基準を0に合わせる
※3dsMaxは自動で57倍スケールしてくれるので、基本的にスケールの必要はありません
作成のポイント
ここまでの手順で気をつけておく点をまとめました。
上下移動はお椀型のカーブに
上下移動のアニメーションカーブはきれいなお椀型のアーチを描くように接線を調整します。
× 山型のカーブだと突き上げるようなバウンドになって不自然
× お椀型を強調しすぎると空中で停止して不自然
お椀の両端は同じ尺になるように
お椀の両端と頂点のフレーム数が同じになるようにするのがコツです。
10F間のバウンドなら、真ん中の5F目がお椀の頂点になるように。
3F間のバウンドのように奇数の場合も、真ん中が頂点になるようにカーブを調整します。
高さと速度が徐々に落ちる
高さのカーブはアーチの高さをだんだん抑えて弾まなくなる表現をしていきます。
前進のカーブは摩擦でだんだん進まなくなって止まるため、最初は早く、後半につれて減速、停止するカーブになります。
軌道を表示する
ボールが動く軌道をシーン表示することで直感的に動きを確認することができます。
Mayaの軌道の表示
- アニメーションメニュー:視覚化>編集可能なモーション軌跡を作成
バウンシングボールまとめ
- 作るアニメーションのイメージを最初に決める
- 上下に弾む・前に進む・転がる、それぞれカーブに分けて考える
- お椀型に弾んでだんだん高さがなくなるカーブを意識
- 等速からだんだん減速・停止するカーブを意識
単純な動きに見えて、微妙なカーブの違いによって不自然な動きにつながることがあります。
逆にキーのタイミングとカーブをうまく制御できれば、球の動きだけで材質の違いを表現できたり、奥が深いアニメーション課題です。
CGアニメーションの基本となるアニメーションカーブの理解につながるので、ぜひ習得してみてください!
参考になれば幸いです。